2007年後半 | 着想 |
2008年初頭とそれ以後 | WWViews の制度設計 |
2008年から2009年5月 | パートナーの選定 |
2008年半ばとそれ以後 | 市民のための質問と情報提供資料 |
2008年後半とそれ以後 | Webツール |
2009年5月23-25日 | トレーニング・セミナー |
2009年5月-8月 | 参加市民のリクルーティング |
2009年9月26日 | WWViews 当日 |
9月26日とその後 | 市民の意見を伝える |
政策レポート【WORLD WIDE VIEWS(世界市民会議)について】
2007年後半
デンマーク技術委員会は市民とグローバルな政策決定者の間で、決定がグローバルになるほどに増大する民主主義的ギャップに対処するものとして WWViewsの構想を発展させてきました。デンマーク技術委員会は一般市民を国内で、あるいはヨーロッパ規模で、一般の市民を政治的な決定の過程に巻き込むという仕事に長年従事してきました。これまでのところ、これをグローバルな規模で行った例はなく、コペンハーゲンで新しい気候条約が結ばれることの期待が高まっている以上、COP15はよい機会であるように見えました。また、この議論が科学者、政治家、強力な利益団体に支配されていることに対して、普通の人々を議論に巻き込むことの明確な必要性が存在します。
市民はCOP15で行われた政策決定を受け入れて生きなければいけません。だからこそ、準備段階で彼らに相談することが公正であると言えるでしょう。さらに、新しい気候条約が無事実施されるためには、世界中の市民がそれを受け入れ、協力することが不可欠になります。もし世界の人口の多くの支持を受けることができなければ、民主的かつ現実的な点から考えた場合、新い条約は効果的に機能しないでしょう。
2008年初頭とそれ以後
WWViewsという手法にとっての基礎は、最初のWWViews パートナーと行われたワークショップの初期に置かれました。WWViews の制度設計はこれらパートナーが直面した問題への対応から始まりました。
- 安く、簡単に。この手法は、世界中すべての国々が、潜在的には、個々の国の経済レベルや一般的な教育水準がどうであれ、参加可能なように設計されなければいけません。
- 政策決定者との明確なリンク。それは政策決定者と密接な関連性を持った問題を扱えなければなりません。
- グローバルと、国レベル両方。 それはグローバルとナショナルの両方のレベルの政策決定にとって重要でなければいけません。
- 明確で比較可能な結果。結果は国ごと、地域ごとに比較可能でなければならず、政策決定者に簡単に伝えられるものでなければなりません。
- 市民への情報提供。市民は討議される問題を理解するのに必要な、バランスの取れた情報を提供されなければいけません。
- 熟議。市民が彼らの立場を決定する前に、彼ら自身の見解を議論するための機会を与えられなければいけません。
- 質的・量的。市民は事前に定められた設問に答える投票を行うと同時に、彼ら自身の提言を表明する機会を与えられなければなりません。
これらの基準に従い、多数の(およそ100名ほどの)市民がそれぞれの国ないし地域ごとに集まり、同一と見なせる会議手法を使い、同一と見なせる設問のセットについて議論し、それらの会合とその結果をウェブを利用して結合させる、ということが決定されました。
WWViews は従来行われてきた世論調査とは重要な点が異なっています。地域や国ごとに100というサンプルのサイズは、結果の統計学的な確かさには限界があることを意味していますが、にもかかわらず国ごとあるいは国際的な意見の一般的な傾向を検出するには十分に大きく、多様です。世論調査とは違い、WWViews の手法は、バランスの取れた、科学的な基礎情報を回答者に提供し、また彼らが裁定を下すのに先駆けて他の市民と議論を行う機会を丸一日用意しています。従って、より詳細な問題とよく考えられた回答を得られるので、WWViewsの結果は、今後市民が徐々に気候変動について学んでいった段階で、伝統的な世論調査を使って取り出せるであろう意見の、先行指標となっているのだ、と解釈できるでしょう。
2008年 から 2009年5月
WWViews の各国パートナーは彼らの個々の国ないし地域での WWViews 会合を組織することに責任を持っています。パートナーになる組織は以下のようなものである必要があります。
- 市民参加型手法に関するなんらかの経験を持っている こと。
- 気候変動という観点でバイアスのない組織であること。
- WWViewsの共通ガイドラインに従うこと。
- その組織で参加のための資金を調達できること。
打診は、呼びかけを広めるのに有用な確立されたネットワークに対して、あるいは潜在的にパートナーであると考えられる組織に行われました。最終的には、50を越えるパートナーが連携して、6大陸に渡る38カ国において44の会合が行われました。典型的なパートナーとは公的な会議、議会付属のテクノロジー・アセスメント機関、非政府市民組織および大学です。殆どのパートナーは自信の資金を利用していますが、第三世界を中心としたいくつかのパートナーには、スポンサーからの助成が行われています。高い動機付けにもかかわらず、いくつかの潜在的パートナーは財政的事情により参加を断念しました。追加の資金獲得が可能であれば、WWViews はより広い範囲に広がるでしょう。
WWViews パートナーに含まれる多くの国、特に発展途上国の多くでは、実際問題として市民の気候変動と気候政策に関してこれまでまったく情報がありませんでした。
各国のプロジェクトマネージャー(WWViews の公式発足となった2009年3月にデンマーク議会前)
2008年半ばとそれ以後
世界中の市民に投げかける質問は、COP15での交渉に直接関連するものが選ばれました。それらの質問は、国家間での比較を可能にするため、各国共通のものにされました。また政策担当者とのコミュニケーションを明確なものにするため、質問は選択肢から回答を選ぶ形式にしました。選ばれた12の質問は、4つのテーマにまとめられました。
・気候変動と、それがもたらす結果
・長期目標と緊急度
・温室効果ガス排出への対応
・技術および適応策のコスト
選択式の質問への回答という制限された形式を補うために、市民が彼ら自身の提言を作成し、それらの提言に投票をする時間も設けられました。
40ページからなる情報提供資料は、気候変動に関する背景知識(IPCCの第4次評価報告書から引用)と、COP15での交渉課題で構成されました。
情報ビデオ(各5〜12分)は、4つのテーマに対し、それぞれ作成されました。ビデオでは、情報提供資料に掲載された中で、最も重要な情報が提示され、確実にすべての市民が必須の情報を持って会議に参加するようにしました。すべてのWWViewsの情報資料は、各国や地域の言語に翻訳されました。
いくつかの国のWWViewsパートナーは、市民が情報資料に親しむ時間を提供するために、会議の前日に市民を集めました。
質問と情報資料は、WWViewsパートナー間の密接な連携を通して作成されました。国際的で科学的なアドバイザリーボードが、責任を持って、資料の質を保証しました。また質問と情報提供資料は、完成前に世界の異なった地域でのフォーカスグループによりテストもされました。
2008年後半とそれ以後
WWViews会議からの結果を、ほぼ同時に収集し、発表するための特別なwebツールがデザインされました。このツールでは、統計に基づく表示や、国/地域、様々な国際的なグループ(例えば、各大陸、附属書I国、非附属書I国、低所得国、高所得国)で比較することもできます。これはwwviews.org で見ることができます。
2009年5月23-25日
WWViewsパートナー国のプロジェクト代表たちの多くが、トレーニングセミナーに参加するために、WWViews本番の半年前にコペンハーゲンに集まりました。セミナーの目的は、WWViewsプロジェクトの共通理解、実施方法の統一、文化的な個別の問題に対する手続き上の解決を確かなものにすることでした。このセミナーより後にWWViewsに参加したパートナー国は、トレーニングセッションのために、コペンハーゲンに来ました。
2009年5月-8月
結果の信頼性を保証するために、参加市民をリクルーティングする際のガイドラインが設定されました。各会議に参加する市民は、年齢、性別、職種、教育歴、居住地域(例:都市、郊外)において、各国や各地域の人口統計上の分布を反映していなければなりません。さらに気候変動の専門家であってはいけません。科学者もステークホルダーも除外されます。またパートナー国は、各国の状況に応じて、例えば人種や民族といった、別の人口統計上の基準を追加することもできます。
参加団体からのレポートでは、地域的多様性や経済的、実践的制約にも係らずガイドラインは守られています。多くの国で、最低限の教育しか受けていない層の比率が低い傾向があります。100人より少ない市民(無視できないほど少ない)の参加しか得られなかった国もあります。全域から市民を集めた国や地域もあれば、費用をカットするために限られた地域から集めた国や地域もあります。
WWViews に参加した市民は、しかし、国際的・国内的な公的意見の一般的な傾向を把握するためには十分に多く、多様です。
2009年9月26日
世界
2009年9月26日午前9時、オーストラリアで、WWViewsの幕が開きました。その36時間後、アメリカのカリフォルニアで、最後の会議が幕を閉じました。一日が過ぎる中で、市民たちは所定の質問に対する選択肢に投票し、彼ら自身の提言を作成しました。それらの結果は、即座に wwviews.org に報告されました。そうすることで、誰もが結果にインターネットでアクセスできるようになり、現在も様々な質問に対する回答結果を、国 、地域、政治的・経済的グループなどで比較することができます。
すべての最新の結果についての、自動的に作成された要約も、即座に手に入れることができるようにしました。
様々な会場から寄せられた写真やビデオは、絶え間なくメディア共有サーバーにアップロードされました。市民に対するビデオインタビューも、同様に入手可能でした。
インターネットのビデオ会議を用いて、中継した国もあります。他国の会議写真や結果を、参加者に対して提示した国もあります。
会議
すべての会議は、同じスケジュールで実施されました。100名の市民が、5〜8人ごとにテーブルに割り振られ、チーフファシリテータと各グループごとのファシリテータの指示に従い、4つのテーマ別セッションと提言セッションを行ないました。
テーマ別セッションでは、全部で12の質問について、選択肢の中から投票をしました。こうすることで、国際的に、量的な比較が可能になります。それぞれのテーマ別セッションでの討議課題は、チーフファシリテータと情報ビデオによって紹介されました。その後参加者は、それぞれのテーブルでファシリテータが司会をする議論に参加しました。
議論の目的は、すべての参加者に、他のメンバーの意見に耳を傾け、投票の前に熟考する時間を与えることでした。各テーブルのファシリテータは、テーブルで偏りのないファシリテーションをするように、前もって訓練されていました。それぞれのテーマ別セッションは、2から4の設問に匿名で投票して終わりです。票は最初に各テーブルでカウントされた後、スタッフによって集計され、即座に wwviews.org に報告されました。
提言セッションでは、市民はCOP15の交渉団に対して伝える、最も重要だと考える提言を、自分たちの言葉で書きました。各テーブルで1つの提言を作成し、その後、すべての市民が全てのテーブルから出された提言を見て、最も重要だと感じた提言に投票をしました。その結果は、得票順で提言リストにまとめられ、wwviews.org に報告されました。
多くの会議では、開会もしくは閉会の際に、大臣、COP15の交渉担当者、他の政府関係者の挨拶が行なわれました。
9月26日とその後
結果を受け取って欲しい対象は、COP15に至る、あるいは事後に、国連の気候に関する交渉に参加している、政治家、交渉担当者、利益団体などです。WWViewsの結果は、特に気候に関する政策担当者にとって重要です。なぜなら、これらの結果は、COP15で取り組む複雑な問題に関して、情報を与えられた上で熟考した、世界中の幅広い市民の意見だからです。
市民の意見を広めるために、すべての国と地域のWWViewsパートナーは、これらの人々に結果を届ける方法について計画を立てました。目標は、これら政策担当者に結果を知らせ、確実に結果を考慮してもらうようにすることです。
オーストラリアでの開始からカリフォルニアでの終了まで、wwviews.org サイト上にたくさんの投票と提言が随時報告され、比較可能になりました。この情報は現在でも閲覧可能です。